近年、日本人の旅先として大人気のクロアチア。
アドリア海に面する世界遺産の町ドブロヴニクや、いくつもの滝が織りなす自然美プリトヴィツェ国立公園など観光地として有名ですね。
隣国スロヴェニアと組んだ旅もポピュラーです。
ではクロアチアの“スラヴォニア(Slavonia)”という場所をご存じですか。
今回は、まだ日本人観光客にほとんど知られていない「スラヴォニア地方」をご紹介したいと思います。
クロアチアで最も肥沃なスラヴォニア地方は“黄金の谷”と称されています。
場所は、首都ザグレブから東に伸びる一帯。
北はハンガリー、東はセルビア、南はボスニア・ヘルツエ・ゴビナと接しています。
ドナウの支流ドラヴァ川右岸に位置するスラヴォニア地方の中心オシェク
オシェク(Osijek)は、首都ザグレブ、スプリト、リエカに次いでクロアチア第4の町です。
そしてスラヴォニア地方の“中心”。
とは言っても、ザグレブから約200キロ、セルビアからわずか約20キロですので、地理的にはクロアチアの“外れ”とも言えますね。
さて、オシェクで訪れたい場所に、18世紀ハプスブルク時代に建設された「トヴォルジャ」があります。
トヴォルジャは、町と軍事施設が複合した要塞都市。いわゆるオシェクの旧市街ですね。
ドラヴァ川沿いの旧市街は“下の町”、高台にある新市街は“上の町”と呼ばれています。
トヴォルジャに足を踏み入れると、ハプスブルク時代の石畳にバロックの建物が並び、ノスタルジックな雰囲気です。
川沿いのプロムナードも散策にぴったりですよ。
一方、新市街では、高さ90メートルの鐘楼をもつ、19世紀ネオクラシックの聖ペテロ・聖パウロ準司教座聖堂に圧倒されます。
また、対岸にはヨーロッパ最大級の湿地帯「コパチュキ・リト(Kopački rit)」が広がり、ハイキングやボート遊覧などスラヴォニアの大自然が楽しめます。
ローマ時代に遡るブドウの栽培、そしてバルカン最古のワインセラー「クティエボ」
スラヴォニアでは、ローマ時代から小麦の生産とともにブドウ栽培も盛んでした。
そこで、是非訪れたいのがクティエボ(Kutjevo)のワインセラーです。
1232年創立のセラーには、こんな秘話が残されています。
「時は18世紀後半。
ハプスブルク帝国の女帝マリア・テレジアは、オシェクへの旅路、軍人フランツ・フォン・トレンク男爵と恋に落ち、2人でこのセラーに1週間こもって美酒に酔いしれた・・・」。
薄暗いセラーと年季の入った樽の香りに歴史が感じられます
。
近郊には、ブドウ畑を眺めながら食事のできるレストランもありますよ。
クロアチア初のジオパーク「パプク自然公園」
クティエボの西には、サヴァ、ドラヴァ、イロヴァの3つの川が流れる古のパンノニア平原が広がる中、標高953メートルの山が突き出ています。その名は“パプク山地”。
クロアチア初のジオパーク「パプク自然公園(PARK PRIRODE PAPUK)」として知られています
。ここにはかつて要塞都市が存在し、その遺跡「ルジツァ要塞(Ružica Grad)」が残されています。
森の中を歩くこと約20分。要塞からは緑豊かなスラヴォニアの大地が眺望できます。
クロアチア最東端の町イロク、そして国境を越えセルビアのバロックの町サンボルへ
オシェクから、さらに東へ進むとクロアチア最東端の町イロク(Ilok)があります。
ブドウ畑の風景が印象的です。
イロクにはドナウ川を見下ろす14世紀の要塞があり、中は現在博物館として、19世紀のワイン産業で潤ったイロクの人々の生活が伺えます。
そしてここまで来たら国境を越えてセルビアの町サンボル(Sambor)も訪れてみましょう。
町はハプスブルク時代を思わせるバロック建築が並びます。
おわりに
クロアチアのスラヴォニア地方はいかがでしたか。
ほかにも毎年6~7月のフォークロア祭りで有名なジャコヴォ(Đakovo)や、その近郊にはハプルブルク時代に“世界最高の軍馬”と称されたリピッツァナー飼育所もあります。
「スラヴォニア地方」で是非クロアチアの魅力を再発見してくださいね。
p.s.クロアチアの古都ヴァラジュディンとトラコスチャン城の記事も読んでみてくださいね!